大変だったシリーズ:TAGAKI Advanced 制作裏話
第1話
TAGAKI® Advanced1,2,3はTAGAKI 60, 70, 80, 90, 100ではありません
著者 松香洋子
TAGAKIシリーズ1であるTAGAKI 10, 20, 30, 40, 50とその解説書「英語、書けますか」は、2018年の10月11日に発売されました。
そして、私の日記によれば、2018年の10月26日には、「Around the World のディスカッションを進めた」という記述があります。この日がTAGAKI シリーズ2の始まりの日でした。シリーズ1の6冊ができたばかりでお祝いムードの中、「よくやるよ」と自分でも思うのですが、それに付き合わされたmpiのスタッフもたいへんですね。残念ながら、この第1回の打ち合わせに誰が参加したのかは日記に書いてありません。
私の心の中では、シリーズ2の開発は、シリーズ1を出版する前から決めていました。多く方々から、「TAGAKI 60, 70, 80, 90, 100が出るのですね」と質問されたのは困りましたが、私にはそんなつもりは毛頭なかったです。
TAGAKIの理念は、「考える→書く→伝える」、というものですが、シリーズ1は、小学生からでもできる、書き写しから始められる、だんだんに書く語数が増える、というものです。学習者の自立を大切にするというコンセプトのもと、指導者には、「教えないで!」とお願いしました。つまり、解説しないで!リピートさせないで!口出ししないで!細かく注意しないで!添削しないで!とお願いしました。
このコンセプトを正しく理解してくださった指導者のもとでTAGAKIに取り組んだ生徒さんから、中間テスト、期末テストの点数が劇的に上昇した、不得意科目だった英語がクラスで2番になった(1番は特別な環境で育った生徒さんだそうです)、英検に合格した等、嬉しいニュースをたくさんいただきました。
そうやって自立して、自分が好むトピックを選んで、自分で内容が準備できることが可能なため、この初夏にはTAGAKIオンライン発表会も実現しました。これはコロナ禍において実現した大きな一歩でした。
しかし、15歳までに世界の同年代の子どもたちに、英語も使って対等に付き合えるコミュニケーション能力がある子を育てる、という私の理念は、TAGAKI シリーズ1では到達できないのです。
そこでこの理念のために3冊のテキストの開発を決めました。
Three Reasons=ユーモアをもって、3つの理由をつけて、自分の気持ちを書いて、語れるようになる必要がある
Around the World=もっと世界中のことを英語で知る必要がある。現代では検索で世界一周ができる
SDGs: Problems & Solutions =地球に住む全人類に課せられている待った無しの問題とその解決法を英語で知り、英語で語れる必要がある
シリーズ2のコンセプトは、見本はあるけど、自力で、「考える→書く→伝える」ということです。シリーズ1では、添削をしなくても学習者は正しい英文を書き、それを暗記し、伝えようとすることで、自信をもって発言できる、ということが達成できましたが、シリーズ2はどうでしょうか?
私はAI添削の可能性を探りました。ある高校生に「AI添削をどう思う?」と聞いてみたところ、「いいと思う。英作文の添削は先生の個人的な好みでされることがあるけど、AIならそんなことがなさそう。公平。」というものでした。
なるほど、と思いましたが、AIの添削を手がけている会社の方と相談した結果、以下のような答えを得ました。
1万件くらいのビッグデータがほしい。(うひゃ〜、無理です!)
生徒さんが手書きしたものを機械的に入力できる
スペリングの間違いはすぐに指摘できる
文法的な間違いもかなり的確に指摘できる
イントロ、ボディ、コンクルージョンといった構成もみることができる
文法、語彙などについてかなり詳しくフィードバックができる
ただし
内容の独創性、ユーモア、などは採点できない。
そこで一旦、AI添削の件は諦め、中高生を対象に、トライアル版を作成し、全国の200人くらいの生徒さんに試してもらいました。私自身も、6人の高校生を対象に実験クラスを1年近く進めてみました。英語コースに在学している生徒さんとか、英語教室に通っている、熱心な、優秀な生徒さんが多かったのですが、その結果は、
・中高生はどのようなトピックについても、柔軟に取り組むことができる。
・タイプ提出は問題がない。
・1つのエッセイであれば、4分くらいから10分程度で書ける生徒もいた。
・検索の技能が優れている。早い。的確。
・国際コースに在学している高校生は、世界的な問題についてもしっかりと自分の意見を述べることができる。
なかなかやるな、日本の中高生!
つまり、しっかりとした見本があれば、それをうまく利用しながら、英語のライティングをすることは可能である。ここをつかんだ私は嬉しかったです。
1万人のビッグデータにはとても及びませんが、日本の中高生の可能性について希望を感じた瞬間でした。大丈夫、これならAI様の力をかりなくてもできる。
まずは生徒の力を信じる。それを踏まえて、必要な添削をする。またはしない。
このトライアルの実践を通して、私が学んだことは、一番伸びた生徒は、見本文をうまく利用した生徒たちであるということでした。ここに伸びる可能性を感じました。
さ、まだまだ続きますよ。
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