COLUMN

2022.08.22

大変だったシリーズ:TAGAKI Advanced 制作裏話 第3話

第3話:どうやってUseful Expressionsを選んだか?

 

TAGAKI Advanced 3冊を製作するにあたってトピック以外にどうしても検討しなくてならなかったのは、

 

・どのような単語や慣用句を使い、

・どのようにして英語のレベルを上げていくのか

・それをどのように学習者と指導者に納得してもらうのか

 

ということでした。そこで以下のことをしました。

 

・下準備をする

・2種類の作業をして、基準を決める

 

作業1.大学生用の英作文教材を利用

 

日本で出版されている大学生用の英作文テキストを使い、3人の指導者にエッセイの中によく使われている単語やフレーズを3つのレベルで拾ってもらいました。

青:  初級レベル。とても基礎的で中学生でも使えそうな単語や慣用句も多い。

黄色: もう少し高度な単語や慣用句で、使えるといいなとするもの。

ピンク: さらに高度で、これが使えたらすごい、と思うもの。

 

3人の先生方の意見が全部、一致したということはもちろんありませんでしたが、一定の方向性は見えました。

 

作業2.英検の過去問題集を利用

次には、英検の準2級、2級、準1級の単語、フレーズ、慣用句を同じように、3段階にわけて拾ってみました。

準2級の表現には2級より高度だと感じるものがあったり、準1級になるとぐんと高度になるということもわかりました。

この2つの下作業を大きな一覧表数枚にまとめました。

 

私は日本の教科書ライターの苦しみをたくさん聞いています。実は日本だけでなく、中国でテキストを書いた人も知っています。それはそれは、たいへんで、途中で契約を破棄しようとしたほどだということでした。

 

教科書ライターは、導入する文法事項とその導入順位の一覧表と

語彙表、フレーズ、慣用句の表を渡されます。

さらに語数を制限される

そして会話文とか、本文とかを指定されるそうです。

 

ある教科書ライターは、言っていました。その作業は過酷で、まるで、手足を縛られ、プールに投げ込まれて、「さあ、泳いで」と言われるようなものだ。

他の教科書ライターはいいました。たった1つの会話文とか本文を仕上げるのに、ダンボール1箱分のボツ原稿が溜まる。

 

これでは、著者が仕事を楽しく、のびのびとできるわけがない、と私はずっと思っていました。著者がその才能を発揮するには、なにより「自由」が大切です。

 

だから私は、3人の著者に、この一覧表を始めから見せるということはしませんでした。まずはトピックをお知らせし、語数をお伝えし、その制約の中で「自由」に書いてもらいました。

 

そしてある時点で、そ〜つと、一覧表を渡し、とても小さな声で、「もしできたら、1冊目には青、2冊目には黄色、3冊目にはピンクの単語や慣用句を、使えるところで使ってくれないでしょうか?」

 

著者の3人は経験豊富。「ほら、きたか!」と嫌な顔をしながら、「これを全部使うとなったら、全部書き直さなくてはならない」と言った人もいました。

「いいえ、とんでもございません。そんなことはお願いしていません。もしできたら、1つのトピックに1つでもいいからお願いします。」

「ま、しょうがないか。」ということで著者の皆さんはどうにか一覧表の中からいくつかの単語と慣用句を採用してくれました。

 

こうして出来上がった原稿の中で、1つのトピックに5つずつ重要単語とフレーズを選びました。

 

Three Reasons  30トピックx5=150

TAGAKI Advanced 1 Three Reasons

 

Around the World 30トピックx5=150

TAGAKI Advanced2: Around the World

 

SDGs: Problems and Solutions  17トピックx5= 85

TAGAKI Advanced 3 SDGs: Problems and Solutions

 

合計 385

 

いろいろとご意見もあることでしょうが、3冊のテキストの内容に合った、そして必要な単語と慣用句を精一杯選んだわけです。

 

しかし、3冊目のSDGs:Problems and Solutions では、国連で用いる単語のレベルが高く、それはそれで対処しなくてはならなかったです。レベルが上がれば上がるほど、トピックの内容にそって必要な単語が増えるのは当然です。

 

このテキストを使ってくださる皆さんも、そして指導者の方もこうして選んだ385の単語と慣用句を気に入ってくれるとうれしいです。